期日:12月4日(日)〜25日(日)*土日と22(木)23(金)のみ開廊
時間:13:00〜19:00
世間(よのなか)は空しきものとあらむとぞこの照る月は満ち欠けしける
この歌は、満ち欠けする月を見て、世の無常を嘆く万葉集中の挽歌である。
2012年から撮り始めた「花街」の東日本のシリーズをまとめ終えた時にふと眼に留まった歌だ。
そもそも、1998年から撮り始めた「花街」は繁華街を通して滅びと再生を見つめようとした作品である。
2011年にそれまで発表した作品の総括的な展示を福岡で行った。その終了翌日に東日本大震災が起きてしまった。その年は、計画停電で暗くなった東京やそれまで撮ってきた街に変化がないか尋ねて回った。見た目には関西方面にはほとんど影響は感じられなかった。そこで、2012年からはちょうど「花街」の撮影地として抜け落ちていた東日本を訪れることにしたのである。
ただ通り過ぎることだけしかできなかった地も多いが、八戸から千葉の旭市まで訪問するのに3年かかった。
今回も「花街」のシリーズの一環として繁華街を中心に撮影し、そこから沿岸の被災地にも足を伸ばした。被災地ではなるべく復興(幸)商店街を訪れるようにした。ここが街の再生の拠点になるのではないかと思ったからである。しかし、5年を経過した今、復興は自分が想像したものと違う方向に進んでいる。
その後も、長野県北部や近くは熊本で大震災が起こっている。人智を超える自然災害に関しては世の無常を嘆くことしか出来ないかも知れないが、そこに人災といえるものが加わらないことを祈るばかりである。